インタビュー・対談シリーズ『私の哲学』
私の哲学Presents
第5回 フミ・ササダ 氏

「のどごし生」「氷結」「ブルガリアヨーグルト」など、普段目にする商品パッケージデザインを数多く手がけているBRAVIS INTERNATIONALのフミ・ササダ氏に、パッケージデザイン開発のプロセスと経営マインドについてお聞きしました。

Profile

5回 フミ・ササダ(ふみ ささだ)

株式会社ブラビス・インターナショナル代表取締役社長 | 社団法人日本パッケージデザイン協会理事長
1968年に奨学生として渡米。ロサンゼルス市立ルーズベルトハイスクール卒業後、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校商学部経営学科入学。同大学芸術学部卒業後、アートセンターカレッジオブデザインにて、グラフィック/パッケージデザイン学科入学。卒業後、ランドーアソシエイツサンフランシスコ本社にデザイナーとして入社。1983年クリエイティブディレクターとして東京オフィスに出向。1992年ランドーアソシエイツ日本代表兼副社長に就任。1996年ブラビス・インターナショナル設立、代表取締役社長に就任。2006年社団法人日本パッケージデザイン協会理事長就任。
※肩書などは、インタビュー実施当時(2009年2月)のものです。

パッケージデザイン

おかげさまで、発売以来大ヒットとなっている「のどごし生」は、発売されるかどうかわからないままデザイン開発が進んでいました。その後何とか発売となりましたが、以来デザインは変わらずにきています。しかし、このパッケージを、デザインされたものとして見ている消費者がどれだけいるのかわかりません。製品を購入すると付いてくるといったイメージで、ファッションや工業製品等に対するデザインのイメージとは違うのではないでしょうか。ですから、パッケージデザインの社会的な地位が、今よりもっと上がってほしいと思っています。

デザインの道へ

 中学卒業後、留学生として渡米する際不安はありましたが、もしかしたら人生が変わるかもしれないと考え決意しました。その時点では、デザインが生涯の仕事になるとは夢にも思っていません。高校時代は建築に興味を持っていましたが、カリフォルニア州立大学では初め社会学を専攻します。しかし、入ってみると自分が想像していたものと違ったので、Business Administrationに変えました。ビジネス系の勉強をしていたら仕事があるかもしれないと思ったからです。その頃、活字、手書き文字などデザイン文字を描くのが好きで、よく友人から頼まれてポスターを描いていました。そのうち私にはこういう才能があるのではないかと思い始め、アートのクラスを受講しました。写真やカメラも好きで、写真のクラスも取っていました。とにかくデザインと写真の世界が本当に楽しかった。一生アメリカに住むつもりでしたから、手に職をつけなければと思ったとき、それならデザイナーという道があると考えたのです。

好きだからこそできる

子供の頃からデザイナーになりたかったわけではありませんが、いろいろと試行錯誤しながら仕事をしてきてデザイナーになって良かったと思うのは、一番好きなことで喜びや感動が持てるということです。やはりそれがないと続けるのは難しい。したくない仕事は、いくら懇願されてもやろうかどうしようか考えてしまう。お金の問題ではなく、好きだからやっていますと言える仕事をしていることがうれしいです。新入社員が入ってくると、一日かけて全員と話しをします。そのとき、この仕事が嫌いだったらここでは無理だと言います。嫌いだと続きませんし、好きだからできるという気持ちを大事にしなければならない。人は上手くできて他人から褒められると、もっとやってみようという気持ちになるのではないでしょうか。

私はデザインが好きですが、実は”戦っている”ことが好きなのです。例えば「氷結」は、スーパーやコンビニで毎日競合商品と戦っています。これは売れるかどうかの”戦い”。商品の”戦い”は、私の”戦い”でもあります。競合他社が新商品を発売してシェアを拡大し、私のデザインした商品が売れなくなってしまったら、それは私の負けです。逆のパターンもあります。日々そういう”戦い”をしているのがとても好きなのです。

BRAVISでデザインした商品は自分の子供みたいなもので、毎日のようにスーパーやコンビニに見に行きます。残念ながらなくなる商品も、反対に大きく成長する商品もあります。中にはデザインだけで売れることもありますが、多くの場合、デザインの力だけで売れているわけではありません。商品自体の良しあしや、価格も大きな要素です。パッケージデザインで重要なことは、お客様が店頭でその商品を手に取るかどうか。0.2〜0.3秒くらいの一瞬で「これ」と思って手に取らせる力は、パッケージデザインの仕事に因るものです。ですから、パッケージデザインは2年に1回は見直す時期が来ます。最近では、もっと短いスパンで見直しをしているケースもあります。

 会社を設立してから13年間、おかげさまで順調にきています。特別なことは何もしていませんが、スタッフには一つひとつのデザインを大切にしようと常々言っています。「こんな物のパッケージデザインなんてできない」、「どうせ売れない」などと絶対に言わない。クライアントの熱い思いがこもった商品に対し、真剣にデザインする。感動を与えられるようなデザインを作る気持ちを絶対になくさないこと。そうすればクライアントから信用が得られ、また次の依頼につながると信じています。

要するに、ブランドや商品を担当している方や会社が我々をどう思うかです。商品が売れれば信頼され、他のブランド担当者からも依頼があると思います。たとえ売れなかったとしても、「BRAVISさんのデザインはとても良かったので、今度何かある時にお願いします」と次につながることが大切であり、人間対人間の関係、仕事一つひとつを大事にするということです。だからいつも全力投球で仕事をしています。

振り返らずに進む

例えば、何年後に従業員を100人にするといったプランを、確実に実現できている人はいないのではないでしょうか。それほど簡単にはいかないはずです。立ち止まらず、ただ前を見て突き進んで行くのでいいと思っています。人間は年をとってそのうち死にますから、永遠ということはありません。どこかのポイントで、間違いなく自分の限界が見えてくる。私はまだ自分の限界を見ていません。限界は後になってわかるでしょう。今は、とにかく行けるところまで行くことだけを考えています。

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仕事に対する姿勢に大変共感しました。 適した時期に適した行動ができる柔軟な姿勢は、経営上最も大切なことだと思います。 一つ一つの仕事に一生懸命取り組む姿勢を起業当初から続けられたからこそ、今のブラビスがあるのだと確信しました。 お忙しい中ありがとうございました。益々のご発展をお祈りしています。

『私の哲学』編集長 杉山大輔

2009年2月 BRAVIS本社にて  編集:楠田尚美  撮影:鮎澤大輝