
ソニーグループを世界的な企業へと牽引し、今もなお日本経済界の中心的存在として活躍を続ける出井伸之氏。ソニー時代のエピソードや経営哲学、日本とアジアのこれからについてお話しいただきました。
Profile
第19回 出井 伸之(いでい のぶゆき)
クオンタムリープ株式会社 代表取締役 ファウンダー&CEO
早稲田大学第一政治経済学部経済学科卒業後、ソニー株式会社に入社。外国部、オーディオ事業部長、取締役などを経て、1995年6月、新卒入社からの抜擢はソニー創立以来初となる社長に就任する。その後、最高経営責任者、会長を歴任。内閣官房IT戦略会議議長、社団法人日本経済団体連合会副会長、ソニー株式会社最高顧問、ゼネラルモーターズ、ネスレの社外取締役なども務める。
2006年、「日本×アジア」の視点で次世代のグローバル企業とリーダーを生み出す事業を行う、クオンタムリープ株式会社を設立。事業創造への仮説や成長機会を、アジアを中心にグローバルな視点で捉え、日本とアジアの飛躍的な進化の実現に向けた活動を展開している。
※肩書などは、インタビュー実施当時(2013年6月)のものです。
出井伸之氏におかれましては、2022年6月2日、享年84歳にて永眠されました。 お元気なうちにこのようなインタビューをさせていただけましたこと、感謝の念に堪えません。インタビューをきっかけに一緒に仕事をしましたが、視野の広さや男性としての魅力を毎回感じていました。色々とありがとうございました!心よりご冥福をお祈り申し上げます。 「私の哲学」編集長 杉山 大輔
ソニーは僕の競争相手だった

ゴルフのプレースタイルと経営スタイルは似ている

再生ではなく新しい価値を

将来を”共に創る”
例えば日本と中国のように、過去の認識の異なる点だけを争っていたら喧嘩になってしまいます。しかし、アジアの将来のために一緒にやっていこうとすれば、方向性は一致できます。この考えは東京大学名誉教授、清水博先生の”共創思想”に基づいています。考え方の異なる会社を取り込むM&Aは容易でないけれど、同じビジョンをもって進むプロジェクトであれば、将来を”共に創る”ことはできるはずです。 また、日本はこれからのポジショニングについて、中国かアメリカの二者択一ではなく、第3のソリューションを考えるべきでしょう。人も、仕事と遊びに加えて自分のための第3の時間が一番重要です。家族との時間は2番目に入りますが、3番目の時間の使い方、第3のソリューションがあらゆる側面において非常に重要なのではないかと思っています。


日本を代表する経営者である出井伸之様とのインタビューを通して、1995年〜2005年の10年もの間ソニーのトップとして指揮を執ることは、相当なストレス、プレッシャーがあり、並大抵の精神力では務まらないと感じました。出井様の経営学については著書で拝読していましたが、それ以外で一番知りたかったことは、「ソニーの社長に抜擢されることを本当に知らなかったか」という疑問です。これは本当にご存知なかったようでした(笑)。
経営は悩みの連続で、一つひとつの意思決定や実行は本気で行っていても、確実なモノは何一つない中、その時自分が信じる最善の意思決定をすることの繰り返しだと思います。決断することが次の壁を乗り越えるプロセスだと、お話を伺っていて感じました。とてもフレンドリーで次世代の若手リーダーを育てるフェーズに入った出井様。これから弊社、そして私がクオンタムリープ(量子力学の言葉で連続線上にないジャンプの意味)すること、次のステップに行くための最大限の努力をしたいと思います。2013年6月 クオンタムリープ株式会社にて 編集:楠田尚美 撮影:鮎澤大輝