インタビュー・対談シリーズ『私の哲学』
私の哲学Presents
第38回 須野田 珠美 氏

第38回は、大手結婚相談所NOZZEの代表 須野田珠美氏をお迎えし、結婚について社会問題も交え熱く語っていただきました。

Profile

38回 須野田 珠美(すのだ たまみ)

株式会社結婚情報センター(NOZZE)代表取締役社長 | ファッションブランド「JuviJuvi」代表取締役社長兼オーナーデザイナー
パートナーと共に大手進学塾「早稲田アカデミー」を設立。東証一部上場、日本屈指の進学塾に成長させる。約20年前、自ら結婚情報会社を設立することを志し、修業のために創業間もないNOZZEに入社。入社2年目で新宿店での現場アドバイザーから営業本部長に抜擢される。2013年、代表取締役社長に就任。現在は約6万組の「結婚を前提とした交際」をプロデュースするほか、様々な講演やセミナー、執筆活動を行っている。
今までのセミナーの集大成とも言える“輝く女性の生き方”をテーマにした初の単行本『45歳からのプラチナ女子宣言!! ~恋も仕事も最高に輝く46の習慣~』を2016年1月に出版予定。
※肩書などは、インタビュー実施当時(2015年10月)のものです。

結婚は生活そのもの

平安時代の日本では、通い婚もあり結婚は今よりも自由な形でした。武家社会になった鎌倉時代から一夫一婦制になり、夫の籍に入る今のような形になったのは明治時代です。それから比べると、現代のライフスタイルは大きく変化しています。私は、これからの結婚は“ボーダレス婚”であると提唱しています。統計によると、近年結婚した3分の1のカップルは離婚しています。その理由として一番多いのが、性格の不一致という、中身を分析するとライフスタイルの違いが原因となっています。食べ物の好みが違い過ぎるとか、朝型・夜型とか、家族に対する思い入れが違い過ぎるとか、あまりに小さなことだからなかなか言えない。言ったら直せるかというと、これがなかなかできない。そうした普段の生活の不満が積り積もって、性格の不一致という形で爆発することが多いようです。

年収や仕事の状況は、めまぐるしく変わる時代です。変わらないものといったらライフスタイルと性格です。ということは、やはりそこをお互い良く理解した上で、その人と自分が一緒に生活していけるかどうか考えることが重要です。結婚は生活ですからね。相手の学歴や見た目も大事なことではありますが、相手が今の自分の生活に入って来ても、何の苦もなく楽しく生活できそうだという人を選べば、絶対に長続きすると思います。結婚を考えるとき、ライフスタイルの譲れない部分は最優先しなくてはならないことなのです。足りない部分はお互いにカバーしあって、コアな部分は譲らない。それがボーダレス婚です。

学校で結婚に関する教育を

私は、高校か大学で “結婚学”というものをきちんと教えるべきだと考えています。結婚は社会学の一環で、人の生き方を左右するかもしれない、大事な教育のテーマなんです。なぜ結婚しなくてはいけないのか。その結婚に必要なコミュニケーション能力が自分にあるのかどうか。子どもは何人くらいもうけて、どう育てていくのが理想的なのか。嫁姑問題はどうすればいいのか。パートナーの老後のケアはどうしたらいいのか。結婚には、人生のあらゆる課題が凝縮されています。結婚する、しないはその人の選択ですが、どう選択するかによって結婚観が出来上がっていくことを学問として教えるべきだと思います。

両親の結婚生活は、子どもに大きく影響します。女性が男性を信じられるかどうかは父親に因ります。父親が給料を入れない、女性関係で問題があったなどの場合、男性を毛嫌いする傾向が強くなります。何年もお付き合いしているのに、なかなか結婚に踏み切れない女性の多くは、そうした場合が多いです。ですから、育った家庭環境に関係なく、今の社会情勢に合った結婚に関する提案を学校でするべきでしょう。DVや育児の悩みなど、誰にも相談することができなくて、本当に困っている人はたくさんいます。これも結婚の大事なテーマです。こうしたことも含め、なぜ結婚に関する教育をしないのか不思議に思っています。

子どもは社会の財産

草食系男子が増えているのは、人間として一番成長する20代に一人でいる人が増えたからです。その時期に結婚して父親になり、夫婦で支え合い頑張って生きていくことで、ものすごく人間力が上がります。30代後半になると自分の生き方が確立され、お互いに譲り合えない部分が大きくなり、自分の空間になるべく他の人が入って来てほしくない状態になります。20代はまだ白紙の状態で、自分の空間に妻や子どもが入ってきても受け入れられ、肉食系パパになって頑張れます。人間は夫婦で生きて、家族の中で成長していくものだと思います。20代のうちに結婚し、子どもをもうけ、家庭内で切磋琢磨しながら成長していく結婚に、自分から身を置くこと。これが社会貢献になり、自分の人生にとってもプラスになります。

パートナーがいると責任感が生まれます。一人でいる限り、人間は自分のことしか考えません。自分のことしか考えないのは、社会のことを本気で考えていないということです。子どもがいると、子どもたちが安心して生活できる社会について考えたり、子どもを通じて地域社会との繋がりを持ったりするものです。そうしたことが、建設的な社会を作り上げていく元になります。独身者が増えて、自分のことだけ考えていればいいと思う人ばかりになると、社会の民意も精神状態も荒廃していくと私は思っています。

父親学級や母親学級で、子どもは社会の財産であり、親だけのものではないと教えることも大切でしょう。一方で子どもたちには、早く親離れをして自立し、自分の家族を作ることが一番の親孝行であり社会貢献だと教育する必要があると思います。

Love is Action!

座右の銘は、“Love is Action!”です。行動を伴わない愛は、まったく意味がありません。「あの人が好き」と思っているだけでは相手に伝わらないし、勇気を振り絞って、「おにぎり握ってきました!」と渡した方が気持ちは伝わります。行動はすべて、愛を基軸にしているのではないかと思います。自分の夢のために頑張るのは自己愛の表現の一つですし、家族のための行動は家族愛から生まれるものです。損得抜きで、会社のために行動したいと思うときもありますよね。それも愛です。人間は愛をいっぱい受けると、今度は放出していくようになります。愛情を持って子どもを育てると、その子は周囲の人を愛する人になります。最初から父親や母親として生まれてくる人はいません。より良い父親、母親、より良い夫、妻になるのは、毎日の小さな行動の積み重ねの結果だと思います。毎日の行動のベクトルが常に上を向いている人は愛を放出できる人です。

行動=生きているということですよね。行動しないのは、ただ生存しているだけ。生きていることを感じながら日々生きていくのが、人間にとって一番幸せなことだと思います。だから、動く、働く。そして、行動する。その行動の源が愛であれば、すべて上手く一つのラインで繋がっていくのではないかと思います。

とても楽しい時間を過ごさせていただきました。感謝です。
杉山さんは、まさに「行動する人」。初めてお会いしたときから、「Love is Action!」を座右の銘にしているわたくしと同じ感性をお持ちの方だな、と感じています。
アメリカ育ちのダイナミックさと、日本人のサムライ魂をもち、仕事も家庭も大切にしているバランス感覚の優れた方。人の懐にスーッと入れる“さわやかな人なつっこさ”がいいですね。亡き夫と話しているようでした・・・(笑)人間が大好きなんですね。
杉山さんが40代、50代になってどんな発信をしていくのか、とても楽しみです。

株式会社結婚情報センター(NOZZE)代表取締役社長 須野田 珠美

 

須野田さんの、「結婚したらその家の新入社員の気持ちで、いろいろなことを学んで吸収する姿勢が大切」というお話は大変参考になりました。自分のカラーを出すことはもちろん大切ですが、まず環境を知り、それから自分の個性を出すという方法は、様々な分野で当てはまる姿勢だと思います。
また、“LOVE IS ACTION!”にも共感しました。やはり、何事も「伝える」ためには、どのように行動するかを考える必要があります。僕は高校生のとき、数学の先生の、「高校生のとき、お金がなかったから5円玉を棒ヤスリで削って指輪にしてあげたことがある」という話を聞いて、5円=ご縁とはナイスアイディアと思い、同じことをしたことがあります。やってみてわかったことは、5円玉は薄く指につけると痛いということでした(笑)。もし、気持ちを誰かに伝えたいなら、ぜひ伝えてみてください。言わないで後悔するよりも、言ってスッキリしてください。

『私の哲学』編集長 杉山大輔

2015年10月 株式会社結婚情報センター(NOZZE)にて  編集:楠田尚美  撮影:Sebastian Taguchi