人は誰しも「自分はなぜ生まれてきたのか」、そして日本人が大切にしてきた精神「大義」について考えることが大切だと説く、村野生世士氏。氏に、新型コロナウイルスによって生活様式が一変した、これからの時代を生きていく術について語っていただきました。
Profile
第99回 村野 生世士(むらの きよし)
井關流哲理天文学研究家 | 未来学者
1949年生まれ。東京都出身。日本大学芸術学部卒業。國學院大學大学院修了。神職の階位「正階」を授与される。その後、東京都港区の乃木神社で研修。日本学生サーフィン連盟初代理事長、第1回全日本学生サーフィン選手権、団体・個人総合優勝。サーフィン関連商品を扱う「コナ・ウインズ」社長、テレビ番組制作会社社長を経て、現在は、哲理天文学を伝える研究家として活動している。
哲理天文学との出逢い
日本が安保闘争の時代、私は19歳でサーフィンに夢中でした。サーフィンミュージックを聴きながら、アメリカはポリネシアから伝わったサーフィンをどのように昇華して音楽を作り、文化を創り上げたのか知りたい、また、日本が戦争で負けたアメリカを見たいと思い、ロサンゼルスとハワイへと旅立ちます。現地で一番感じたのは、このアメリカに負けた日本はこれからどうしていくのか、ということでした。なぜ、刀も弓矢も取り上げられ原爆を落とされたのか、自分はこれからどうやって生きていけばいいのかと悩んでいたとき、「哲理天文学」の井關先生に出会います。 アメリカから帰ってきた頃、自分は何をしたいのか分からず、日々悶々と過ごしながら、ハワイに行ってはサーフボードを買ってきて売り、儲けたお金でまたハワイに行く、という生活を続けていました。24歳のときふと、「このままではいけない、日本文化を勉強しよう」と思い、國學院大學大学院の神道科に通い、神主の資格を取得しました。私の母がカトリック信者だったこともあり、子どもの頃からキリスト教は身近で、哲理天文学の教えである仏教、そして神道と、3つの宗教を自分の中に取り入れました。 その後、「あなたは趣味を仕事にすると前向きになる」と井關先生に言われたことを信じ、日本で一番古いサーフボードメーカーに就職しましたが、数年後その会社が畳まれるのをきっかけに起業します。先生に相談するといくつか日にちをあげられ、「この日にお父様に話してごらん。村野さんにとって良い日で、理解を得やすい日だ」と言われてその通りにすると、親父は「やってみろ」と起業に賛成してくれました。哲学の必要性
タイミングが良かったのか、6年ほどで約10億円売り上げます。一番調子が乗っていた9年目に、「来年は会社を半分にするか、どこかに売ってもいい」という井關先生の言葉に耳を貸さず、サーフィンファッションの分野に利益を一気に投入します。しかし、運悪く時代の流れはDCブランドに。根本を無視して、先生のアドバイスの良い面だけを聞いた結果大失敗に終わり、38歳の私は事業を清算し、先生に弟子入りして本格的に哲理天文学を学び始めました。 「哲理」とは、辞書には「哲学的な道理」と載っていますが、人生における真理哲学的な道理のことです。そこに、星や太陽、月の動きから生まれた暦、天の動きと運命との関わりを見出すのが「哲理天文学」です。満ち潮のときにプランクトンが陸に上がって哺乳類が生まれたように、生命誕生には引力が影響しています。満ち潮のときに赤ちゃんが生まれ、引き潮のときは死が多く、女性の月経は月の軌道と関係しているということは、人間の体は宇宙の仕組みに左右されているのです。 哲学が重視されるのは、哲学を学ぶことによって、あらゆる学問の基礎をつくると同時に、ビジネスや答えのない課題に立ち向かうスキル、応用性の高い思考が身につくからです。儲かることだけが良いことではありません。人のために役立つことです。これからは、哲学を持った会社、経営者が生き残るでしょう。我思う故に我あり
人は、「自分はなぜこの親から生まれてきたのか」を問い、親子や兄弟姉妹関係といった、家族の方程式を知ることが大事です。人間はよく、マツやスギ、サボテンといった木に例えられます。マツとマツが結婚して陽当たりの良い場所に植わると、何百年もの間良いマツとして育ちますが、スギの男性が、サボテンの女性と結婚して砂場に植わったら、そのスギは育たないでしょう。ですから寄り添う人、自分のDNAは大事なんです。DNAは自分の祖先が辿ってきた歴史であり、哲理天文ではDNA、つまりルーツを重要視しています。 ルーツを知って人生において自分がすべきことを考え、大自然の法則、原理原則に従って行動することが、お釈迦様の考えた「自然に生きる」ことです。次の世代のために行動することは、自分の老後にプラスになります。今、日本の一番の問題は少子化で、大切な日本文化をつないでいく子どもたちがいません。これは、今後日本は発展していかないということでもあるのです。「大義」について考える
戦後、日本はアメリカの民主主義を取り入れ、経済的繁栄だけを重視し「日本人の精神」は奪われました。今回の新型コロナウイルスのパンデミックによって明らかになりましたが、日本の政治家や世界の人たちは、生きていることが全てだという考え方になり、生命尊重以外の価値をなくしました。日本人が持っている精神「親との絆、大義、人のために死ぬ」ことに対して鈍感になっています。戦時中16、17歳の特攻隊員は、家族のため、日本のために敵艦に突っ込みました。アメリカ人に頭がおかしいのではと言われたとき、私は不信感を抱きました。外国人には理解できない危険な思想かもしれませんが、生きることよりも大事なこと、「死ぬことは大義である」という文化が日本にはあります。 三島由紀夫の声明文の一部を紹介します。 「我々日本人は、戦後日本の経済繁栄に現を抜かし、日本国の本体を忘れ国民精神を失しつ、本質を正さず末に走り、その場しのぎと具善に陥り、自らの魂を空白状態へ落ち込んでゆくのを感じ、生命尊重のみで魂は死んでもよいのか?生命尊重以上の価値の所在を大事にしたい」。 自分のためだけに生きて、自分のためだけに死ぬほど人間は強くありません。人間は、「何のために生きるのか」を考える生き物です。自分のためだけに生きていては飽きてしまい、自分の死を世の中や誰かのために役立てたいという思いが必ず出てくるはずで、それが「大義」です。若いうちは、なぜ自分が生まれてきたのかをゆっくり考え、大義とは何か、生きているよりも大事なことがあるという思想、哲学を勉強することが大切です。身密、口密、意密
新型コロナウイルスによって生活様式が変わったこれからの時代を生き残り、心穏やかに過ごすために、真言密教の教えを伝えたいと思います。それは「身密」「口密」「意密」です。 「身密」は、自分の行動を見直し、大切なものを見極めること。人の命を守る行動を実践すること。身を清め、体を動かすこと。自分勝手な行動をしないこと。 「口密」は、自分の行動を見直し、正しさを考えること。感謝の気持ちを伝えること。 「意密」は、自分の心の揺れ、動きをしっかり観察して正すこと。自分の心の奥に触れて、自分に行き着くこと。他者のことを考え、気配りをして認めること。大きく呼吸し、空と大地の一体感を感じること。心迷わず原理原則を守ること。 真言密教では、世の中すべてのことは、大日如来の働きと同じであると考えられていて、体、言葉、心の3つの働きを通じて仏様と一体になる努力をせよと説いています。大日如来とは「あるがままに、あるが如く、世の中を見る仏の世界から来る仏様」という意味です。仏様の慈悲を信じ、あるがままに自分の心を知る努力をすれば、真理を知ることができるとされています。私も「身密」「口密」「意密」の教えを参考にした生き方を実行していきたいと思います。井關流哲理天文研究家
村野 生世士
村野生世士さんは、「2020年のオリンピックはいろいろな要素があるため、中止になる可能性がある」と2018年に仰っていました。事実、新型コロナウイルスによって延期になりました。また、絶好調だった当時、「杉山さんは来年2月以降、自分ではどうしようもない精神状態になるよ」と言われたのですが、実際2019年2月に倒れてしまい、半年間メンタル面がダメージを受け、何をしても改善できませんでした。他にも村野さんは的中されていることが多く、今回のインタビューでは、2020年の後半に天変地異が起きる、特に地震が起きる確率が高いと話されました。「備えあれば憂いなし」、それに向かって「準備」をすることが大切だと教えていただきました。僕は、発電機と電気がなくてもきれいな水を作れる機器を購入しました。自分の信じること、自然の摂理を理解することが大事だと考えるようになりました。 『私の哲学』、今回で第99回を迎えました。これまで登場いただいた方々のおかげで、僕自身の「哲学」を持てました。大義を持ち、正しいことをする生き方がこれから最も大切だと考え、そのように行動していきます。
2020年6月 取材協力 鎌倉一条恵観山荘 編集:杉山大輔 ライター:楠田尚美 撮影:稲垣茜