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福岡放送のアナウンサーからキャリアをスタートし、フリーランスに転じて30年を迎える堤 信子氏。その間にエッセイストとして、さらに大学講師として、仕事の場を広げてきた時間の中で大切にしてきたこと、自然体でお話しいただきました。
Profile
第28回 堤 信子(つつみ のぶこ)
昭和女子大学 | 青山学院女子短期大学 | 法政大学兼任講師 | フリーアナウンサー | エッセイスト
1962年福岡県生まれ。福岡県立修猷館高校から青山学院大学経済学部を卒業後、FBSにアナウンサーとして入社、その後フリーに。NTV「ズームインスーパー」TBS「はなまるマーケット」朝の情報番組でレギュラーを長年務めるなど、TV、ラジオ、講演、司会などで幅広く活躍中。
また、エッセイストとして、感謝をテーマにした著書などを始め、WEBや紙面での連載も手がける。さらに、大学では、プレゼン、朗読などのスピーチ各論の授業で、学生たちの伝える力を向上させるべく、教鞭を取っている。
堤信子オフィシャルサイト
※肩書などは、インタビュー実施当時(2014年4月)のものです。
卒業までに英検1級!が条件で、東京の大学へ
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故郷、福岡放送の局アナ時代に鍛えられました
福岡放送のアナウンサーとして故郷に戻り、入社して9年で結婚しましたが、10年目に夫が転勤になったのを機に局を辞めました。以来、フリーでおよそ20年。30年もアナウンサーをしているわけです。 故郷の福岡が大好きだったし、福岡放送時代の仕事はすごく恵まれていました。入社2年目に、徳光さんがメインだった全国ネットの『ズームイン!!朝』に出ることになったのですが、『ズームイン!!朝』を担当すると局の看板アナって言われた時代でしたから、いろんな経験をさせてもらい、少しずつ鍛えられたと思います。まだ実力も伴わないのにメインの仕事を任せられて、ありとあらゆる特番で総合司会を任されることになったり。それはもう、ラッキーとしか言えない時代。私は局アナをやめたくなかったのですが、その後『ズームイン!!朝』のメインになった福留さんに「東京に来たら、新しい世界が広がるよ」と言われて局を辞め、後ろ髪を引かれる思いで福岡を離れました。フリーランスになった東京で、仕事の幅が拡大
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主役を輝かせる、脇役としての存在感
アナウンサーとしては当然ですが、日本語を大切にしてきました。同時に、アナウンサーはスーパーな脇役であり、主役である情報やゲストを引き立てるのが仕事。それを忘れないようにしてきました。タレントになってしまうタイプも、自分の個性をもっと出すタイプもいて、そういう人が重宝がられる番組もたくさんありますが、私が携わった朝番組では自分も輝きながら、その輝きで周りの人をもっと輝かせることが職人のようにできることを求められた気がします。 私は結婚していて生活のためというわけではなかったので、仕事を好きで続けてきて、お金は後から付いてくるという感覚がありました。男性のように家族を養うためにお金を稼ぐことが第一義ではなかったことは確かですが、一本一本の仕事に全力投球を心がけて、地味にコツコツ頑張ってきたと思っているのですよ。ライフスタイルを伝えたくて、エッセイを執筆
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勉強が嫌いだった私が、大学で教えていること
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ピンチを乗り越えたら、周りに楽しくお返しします
先日、取材で「心が折れない条件」をきかれたのですが、生きていく上で大切なことは2つあると思います。1つは、自分を椅子に例えると3本より4本、5本より6本の脚で立っていること。そう考えていれば、自分を支える脚が1本や2本折れても立っていられます。大切なことが1つしかないと、それがうまくいかなかった時に心が折れてしまう。1つに夢中になることも素晴らしいことですが、自分を支えるもの(脚)がいくつかあったら、他のことに気持ちをシフトすることで自分の気持ちを強く持つことができる。だから、いろいろなことに興味を持って、チャンスがあればドンドンやってみれば良いのです。 もう一つは、自分にとって都合が良い人だけでなく、時には自分の足を引っ張ろうとする人も、人生には必要だということ。人気ドラマの主人公は次々と事件に巻き込まれますが、自分がピンチになった時に、私は今、ドラマのクライマックスにいるのだと考えると、誰でも人生というドラマの主人公になれるのです。自分を少し客観視して、乗り越えていくプロセスを少し楽しんで。ツイていないことが起こっても凹まずに、ピンチの数だけ人に良いことでお返しをしたいと考えると、人生は楽しくなってくるものです。
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大胆さと緻密さ、クールさと温かさ、相反するものをバランス良く併せ持ち人の心をつかむナイスガイ杉山さん、即行動なだけでなく、形になるまでちゃんと続けるという姿勢には頭が下がります。大好きなモンブランブティックでの対談、最高でした。
フリーアナウンサー、エッセイスト 堤信子
堤信子さんの『100人中99人に好かれる ありがとう上手の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)を読み、僕はどうしても「ありがとうの達人の堤さん」にお会いしたいと思い、Facebookの共通の友人に頼み、お会いするチャンスを得ました。実際にお目にかかった堤さんは、とても透き通った声の持ち主でした。ビジネスを続けていると、「ありがとう」のひとことから扉が開き、新しい出会いやチャンスが訪れるきっかけになると感じる場面が多くあります。今の自分が置かれている状況も、すべて皆様のおかげだと、あらためて実感する出会いでした。
2014年4月 モンブラン銀座本店にて ライター:藤原ようこ 撮影:鮎澤大輝