独立後、大きな失敗を経験して利他の心を学び、どん底から会社を大きく成長させた、佐々木広行氏。「インナービューティ」の分野で世界一を目指す氏に、会社の存在意義や今後の目標などを伺いました。
Profile
第97回 佐々木 広行(ささき ひろゆき)
株式会社プロラボ ホールディングス 代表取締役会長 グループ代表 兼CEO
1968年神奈川県生まれ。早稲田大学卒業。大学卒業後、セキュリティ会社に入社。1998年に起業し、フリーペーパーの発行や広告制作を手掛ける。2002年、フランチャイズのエステティックサロン経営を始める。2008年から自社開発したサロン専売ハーブティー『Esthe Pro Labo』の販売を開始。その後、酵素ドリンクやサプリメントなど、さまざまなインナービューティ商品を開発、販売している。また、「一般財団法人 内面美容医学財団」を設立し、内面美容・予防医学・妊活に関する知識の啓蒙、調査研究なども積極的に行っている。
失敗から学ぶ
僕は学生時代から経営者になると決めていて、30歳で独立しました。具体的にやりたい事業があったわけではなく、昔から政治家や経営者の本を読むのが好きで、こういう大物になりたい、成功したいという単なる憧れからの起業でした。フリーペーパーや広告を制作する会社を立ち上げ、努力を惜しまず仕事していましたが、35歳の頃、取引先から入金されないという事態が発生して銀行への返済が滞ってしまい、そこから徐々に会社が傾いていきました。お金だけでなく社員や取引先、銀行の信用がなくなり、人も仕事もお金も離れていく厳しい状況を、ずっと周囲のせいにしていました。何をやっても上手くいかない中で、なぜ裏切られてしまったのか、なぜ事業が上手くいかないのかを考えるようになり、もしかしたら全て自分に原因があるのではと思い至ります。 この頃、稲盛和夫さんや松下幸之助さんなどの本を読み、「利他の心」について学びました。以前は、「周囲を豊かにすることが自分の幸せにつながる」という考え方が、どうにも腑に落ちませんでした。自分が成功しなければ、社会貢献なんてできるはずがない、と思っていたのです。しかし、自己破産寸前にまで追い込まれて初めて、スタッフが笑顔で仕事できなければ成功はあり得ないことを理解し、100%僕自身が原因だったことに気づきました。今は、家族の幸せから始まり、全社員、協力会社、取引先、お客様へと広げ、その先にある業界団体や日本国民、そしてアジア、世界の幸せに目を向けなければ大きな事業はできない、と心の底から思っています。経営者に必要な資質
昔からの友人に聞くと、30代前半の頃は周りに怪しい人ばかりいて、危なっかしいなと思っていたそうです。今考えれば、あり得ないようなうまい話でも、当時は全部乗っかっていましたからね(笑)。楽観的でどんなこともプラス思考で考えていました。それが、さまざまな経験を重ね、少しずつ地に足が着いてきました。失敗したトラウマがあるからか、常に先のことを考えて行動するのが習性になっています。経営は、決断の連続。慎重すぎるほどの用心深さと、周囲が心配になるほどの大胆さの両方を持っている人が大成功すると思います。 日本は、一度でもつまずくと失敗者の目で見られてしまい、セカンドチャンスをつかむのが難しい社会です。日本政策金融公庫は、その人の経験がある分野での独立に対してしか融資してくれません。経験は大事ですが、もっとチャレンジ精神を認めてもいいと思います。そうしないと、行動力のある、若い優秀な人材がどんどん海外に流出してしまいます。人口が減少している状況で、これは危機的な問題ではないでしょうか。一点集中と一番化戦略
経営には、会社の存在意義の上に「勝てる戦略」が必要です。僕はランチェスター法則の本を読んで、「一点集中」と「一番化戦略」について学びました。広告制作にしろ、エステティックサロン経営にしろ、どれも市場の中で一番になれる事業ではありませんでした。自分がやりたいことではなく、一番になれることをしなくては駄目なのです。そこで僕は、2007年に3種類のハーブティーを作り、経験値があるエステティックサロン市場をターゲットとし、サロン専売にこだわってそこでの一番を目指しました。これがもし、強者が多い化粧品で勝負しようとしていたら、一番になることはもちろん、現在のように事業を大きく展開することもできなかったでしょう。 小さい市場で一番になってから、その実績を活用して大きく広げていく、この順番が大事です。僕はハーブティーで一番になった後、酵素ドリンク、ダイエット食品と商品展開していきました。ブランディングも大切ですから、ハーブティーを入り口として、途中から「インナービューティ」という考え方を全面に出し、その世界での一番を目指しました。おそらく、エステティックサロン市場でのシェアは一番だと思います。次は日本で一番、さらに世界で一番を目標にしています。健康の要は「腸」
「インナービューティ」のベースには、「健康寿命の延伸」という我が社の存在意義があります。健康寿命とは、寝たきりの状態ではなく、最後まで元気に生きること。そのためには、やはり食事が重要です。現代には、農薬や食品添加物、有害な金属、精製した砂糖、質の悪い油、さらに食べ過ぎの問題があります。僕は広告制作会社時代に体重が100kgあって、毎日たばこを吸い、浴びるようにお酒を飲んでいました。今は、朝は酵素ドリンクだけを飲み、あとは夕食だけの一日一食を理想としています。会食が多くてなかなか実践できていませんが、できるだけ胃や腸に負担をかけないことが健康維持には大事なんです。 人間の体は食べたものでできていると言いますが、具体的には食べて小腸で吸収されたものでできています。腸の状態が良くないと悪いものを吸収してしまい、血液が汚れ、細胞を汚してしまいます。発達障害には腸が関係しているそうですが、ホルモン系の脳内神経物質は、腸で前駆体が作られてから脳に届きます。腸をきれいにし、体を温めることで、さまざまな体の不調が整います。ですから我々は腸と「温活」をテーマに、医師と一緒にセミナーや講演会を全国各地で実施しています。世界中の健康寿命の延伸を目指して
プロラボの商品は、ハーブティーや酵素ドリンクなど19種類53製品の『GRAN PRO.シリーズ』の他に、セカンドラインとして、プロシリーズ、海外向けコンセプトシリーズ、医療機関監修グランメディックシリーズの3つのブランドを展開しています。世の中にはイメージだけで売っている健康食品、機能性食品がありますが、我々は確かなエビデンスを取ったものを販売しています。医学顧問の方と提携したり、東京大学の先生にご指導いただいたりしながら、きちんとした学術的データを取り、それを第三者機関で証明することをずっと大事にしています。原材料表記を見ても、その原料を作る過程までは分かりません。加工段階での原料に、ケミカルなものが使われている可能性はあります。我が社の乳酸菌サプリメント『フローラバランスEX グランプロ』の原料は100%植物由来。添加物を一切使わずに作られる、長野県の“すんき漬け”という漬物の乳酸菌と酵母を使用しています。 我が社は、販売先には商品についての知識よりも、食事に関する正しい情報と知識を学んでもらい、エンドユーザーである消費者に伝えてもらう、単なる物売りではなく、食に関する教育活動に力を入れています。「内面美容医学財団」はその一つで、内面美容・予防医学・妊活に関する知識の啓蒙、調査研究やセミナーの実施などさまざまな活動をしています。また、医療からのアプローチとして、再生医療と予防医療に特化したクリニックをプロデュースしています。そのほかに業務用の健康器具の開発も行っています。 現在は世界6ヶ国に進出していますが、中東での糖尿病問題は深刻ですし、特に今後5年間は日本やアジアだけでなく、世界中の人々の健康に貢献するべく活動していきたいと考えています。株式会社プロラボ ホールディングス
代表取締役会長 グループ代表 兼CEO
佐々木 広行
僕は「会いたい人には会う」「やりたいことをやる」を大切にしています。これは第54回に登場いただいた、僕のメンター滝富夫さんに教わったことです。会いたかった佐々木広行さんに会えて、取材する機会に恵まれました。佐々木さんの会社に行くと、彼の考え方や志がしっかり社員に伝わっていることが分かります。社員のみなさんは明るく、笑顔で働いています。 取材前に「インナービューティ」について調べましたが、勉強不足でした。メンテナンスの重要性、食べる物、飲む物など一つ一つ意識を持つことで、自分の体をより大切にできることを学びました。お話にあった、数字や実証データに基づいた商品開発や「一点集中と一番化戦略」の切り口と実践力は最大限リスペクトします。 ちょうど僕の3冊目の著書『DDDDD(ドゥドゥドゥドゥ)』が発売された時でもあり、人生や事業を切り開くのは、DOをいかに継続するかだと、佐々木さんの取材を通して絶対に間違っていないコンセプトだと確信しました。PDCAから、考えながらDOするDDDDがこれからの時代もっと必要になります。Just DDDDD itとDDDD your Bestを続けようと思ったインタビューでした!
2019年10月 株式会社プロラボ ホールディングス本社にて ライター:楠田尚美 撮影:稲垣茜